岐阜高専(国立岐阜工業高等専門学校)は岐阜県の南西部、日本さくら名所100選に選定されている薄墨桜でも有名な本巣市にキャンパスがあります。全国に51校ある国立高等専門学校の1つで、独立行政法人国立高等専門学校機構に所属しています。
岐阜高専は昭和38年(1963年)に設立され、60年近い歴史を持っています。5年間一貫教育を通して、ものづくりの基盤を支える技術者としての十分な基礎学力、一般教養教育と工学の早期専門教育により、実践的技術者、指導的技術者を育てる伝統ある学校です。機械工学科、電気情報工学科、電子制御工学科、環境都市工学科、建築学科の5つの専門学科と専攻科(先端融合開発専攻)があり、これまでに約8,862名の本科卒業生と約748名の専攻科生を社会に送り出してきました。令和3年(2021年)3月には本科と専攻科を合わせて226名が卒業、修了し、それぞれの進路を歩み始めました。卒業後の進路は技術者として企業、公的機関で活躍できます。特に産業界からは高専卒業生の評価は高く、非常に高い求人倍率(ここ数年は本科卒業生は27倍、専攻科修了生は28倍程度)となっています。また、就職以外にも、本科卒業生は、岐阜高専の専攻科への進学、大学3年次への編入学により学士の資格を得ることができます。専攻科を修了し、学士号を得た後はさらに大学院への進学の道も開けます。
科学技術の急速な進展、少子高齢化、グローバル化、気候変動に加えて新型コロナ感染症などにより、社会は大きな変化を加速しています。高専を取り巻く環境も変化し、高専卒業生に求められる資質や能力も変わりつつあります。その中で、社会実装に大きく貢献できる人材育成を基本に、イノベーションを実現できる技術者を輩出する高専の役割は変わりません。
本校は、教育理念に基づき、科学技術に夢を託し、人類愛に目覚め国際性豊かで情報化社会の最前線で活躍する指導的技術者の育成を目指します。高専における教育・研究の質の向上、地域連携のさらなる強化、社会の変化に対応する教育改革について努力を重ねていく所存です。皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
岐阜工業高等専門学校に入学された新入生の皆さん、保護者の皆様、そしてご関係の皆様、岐阜高専の教職員を代表して、心からお祝いと歓迎を申し上げます。皆さんを新たな仲間として岐阜高専にお迎えできることを私たち教職員一同大変うれしく思っております
本日、岐阜高専本科には209名の皆さんが入学されました。機械工学科41名、電気情報工学科43名、電子制御工学科43名、環境都市工学科42名、建築学科には40名が入学されました。そして、本校本科を卒業され専攻科を目指された35名が専攻科に入学され、総合計246名の方が、新入生として入学されました。本校の教職員一同、心よりお祝いし、皆さんを歓迎いたします。
岐阜高専は岐阜県に唯一の国立高専ですが、全国に51の国立高専があり、公立、私立の高専を含めると57高専、約6万人の高専生が日本全国で学んでいます。高専の特徴の一つは5年一貫教育です。学んだことを応用する能力を身につけるために、理論だけではなく実験・実習に重点が置かれています。5年一貫教育ということは、15歳から20歳までの学生、さらに専攻科を加えると22歳までの実に幅広い年齢の学生が岐阜高専で学んでいます。このような環境は他では決して得られないとても貴重な環境です。皆さんは身近にいる様々な年齢層の先輩からいろいろなことを吸収できるのです。ぜひこの環境を大事にして最大限に活用してください。もちろん先輩だけでなく、教職員も新しい仲間である皆さんと一緒に岐阜高専を盛り上げていこうとしています。
私は、昨年4月に岐阜高専の校長に着任して1年がたちますが、いまだにわからないことがたくさんあります。そんな時は何でも教職員の方々に聞いています。皆さんも、もしわからないこと、困ったことなどがあればぜひ私を含めて近くの教職員に聞いてください。精一杯お応えします。私たちは普段の皆さんの生活を含めて岐阜高専での教育、研究の水準をより高度なものへと発展させ、そして社会へのいろいろな形での貢献を進めていきます。これまで以上に社会から愛される高専にしていきたいと考えています。そのためには皆さんが、「岐阜高専は面白くてしょうがない」そして「岐阜高専で学んで本当に良かった」と感じるようになってほしいのです。
今年は高専制度創設60周年を迎えます。そして来年は岐阜高専創立60周年です。今年の2月に東京工業大学学長の益一哉先生を岐阜高専にお迎えして岐阜高専リーディングレクチャーを開催しました。益先生は高専のご出身であるということもあって、私たちにとってとても有意義なお話をしていただきました。いろいろなお話の中で、これから大事なこととして「べき」から「たい」へということを考えてみること、がありました。少しわかりにくいですが、例えば「岐阜高専はこうあるべき、ではなく、岐阜高専はこうありたい」と考えるということです。自分のあるべき姿を決めてしまうのではなく、まずは自分の在りたい姿を考えることからスタートです。また、一歩先を考えることの重要さにも触れられ、他分野とのコミュニケーションについては特に強調されておられました。他分野とのコミュニケーションというのは、自分とは違うものを受け入れる意思を持つということではないでしょうか。世界や社会はどんどん変化していきます。この変化の中でどう生きるか、いつも考えていないといけません。そのために必要なこととして益先生は、「面白いかもしれないという志を持つこと」、をあげておられました。このことは私もとても大事なことだと思いました。
岐阜高専では早い時期から授業科目に各学科の専門科目を組み入れています。一つの専門に集中することはとてもいいことです。一方でほかのことが見えなくなってしまうことのないように、ぜひ視野を広くいろいろなことを見てください。一番大切なことは、自然界の本質を理解することです。そうすると、人間が知り得ていることは、まだまだほんの少しだけのことだということが分かってきます。そして、人間が知り得ていないこと、不思議なことについても、理解できるようになっていきます。物事の本質、仕組み、そして根源を理解する努力を続けてください。
残念ながらコロナ禍はまだ続いています。岐阜高専ではこれまで様々な工夫や対処法を研究し、オンラインでの授業をはじめとする様々な方法で、一定の安全を確保する努力を続けてきました。これからも決して気を抜くことはせずに適切な対応を取っていきます。これには学生の皆さんのご協力が一番重要です。今後も状況に応じてオンラインでの授業に加えて、部活動の制限、昼食の黙食などいろいろな制約があるかもしれません。岐阜高専が一丸となってこの厄介な問題を克服していかなければなりません。
新入生の皆さんが岐阜高専で快適で健全な学生生活を送れるように教職員一同全力で支援します。これから始まる新しい岐阜高専での学生生活を大いに楽しんでください。
本日は入学おめでとうございます。
令和4年4月3日
国立岐阜工業高等専門学校
校長 伊津野 真一
ご卒業、修了、おめでとうございます。
これまで、コロナ禍の影響で、卒業式の開催を中止または分散して行うことを余儀なくされましたが、今年は何とか卒業、修了される全学生が一堂に会した式を実施することができました。これまでに培ったコロナ禍に対する様々な対処法、何より学生の皆さんのご協力、保護者の皆様のご理解、ご支援、そして岐阜高専教職員の協力の結果と思っております。ここに改めてお礼を申し上げます。
本日、本科生は193名が卒業します。機械工学科37名、電気情報工学科35名、電子制御工学科37名、環境都市工学科44名そして建築学科40名です。専攻科生は33名が修了します。
4月には新入生が入学しますが、皆さんが入学されたときを思い出してもらうと、これまでの間に精神的にも肉体的にも自分自身の変化の大きさに驚きを感じられることと思います。
大きな成長を遂げただけでなく、同年代の人たちに比べて圧倒的に優れた技術的素養を身に着けたことになります。このことは自分ではなかなか気づきにくいことですが、岐阜高専の卒業生、修了生は明らかに技術力の面では他を圧倒しています。皆さんの卒業研究発表、専攻科研究発表の一部を拝見しただけでもその一端をうかがい知ることができます。
岐阜高専を卒業するということは、皆さんはすでに科学技術の専門家として認められ世の中でそれを役立てていくということが強く期待されているのだということをぜひ自覚してください。しかしこれで安泰だということではありません。技術的素養を複合的に展開していくためには、むしろこれからの生き方が極めて重要です。皆さんの能力をこれから発揮していくために必要なことは多いのですが、特に重要と考えられるのは、コミュニケーションの重要性を認識することです。特に他分野の人たちとのコミュニケーションを大切にすることはとても勉強になります。様々な価値観の中で自分の専門分野をどのように生かすことができるかを考えることはとても大切なことになります。
ここ数年のコロナ禍の影響は計り知れません。しかしながらいろいろな問題点をコロナ禍のせいにできるのは終わりつつあります。コロナ禍で勉強したこと、気が付かされたこともたくさんあります。特に他者の存在、すなわち人と人とのつながりの大切さ、対話、助け合い、励ましあい、思いやり、感謝の気持ち、などが改めて強く感じられるようになり、その重要性が再認識されました。コロナ前に戻ることはもはやできません。制約の中で真の豊かさを見つけるためのいろいろな取り組みや考え方が今後ますます大切になります。ニューノーマルへ向けて他者の存在を大事にしながら移行していくためには様々な工夫やアイディアが必要となります。
今年は高専制度創設60周年を迎えます。来年は岐阜高専にとっても大きな節目となる創立60周年です。皆さんは岐阜高専の歴史を築いていく重要な一員です。成功者になることを考えるのではなく、価値ある人間になることをぜひ考えてください。自分のことではなく他の誰かのために生きることがその一つの道ではないかと思っています。これからの皆さんそれぞれの輝かしい未来に向かって突き進んでください。
以上、お祝いの言葉とさせていただきます。ありがとうございました。